【お知らせ】AI Online Seminar 駐在員が知っておきたいAI導入アプローチ 第6回「AI活用の土台づくり ― 大量の社内データを"探せる・使える"状態にする整理の進め方」を10月22日(木) 午前9:00–9:50 PDTに開催いたします。ご登録はこちらから。

(38) AI活用の方向の決め方

AIを使うハードルは急速に下がっています。以前ならIT部門や外部ベンダーに依頼していたような小さなアプリケーションや分析を、営業、経理、購買などの担当者自身が作れるようになりました。高度なIT部門を持たない企業にとって、これは大きなチャンスです。

しかしながら、私たちの経験では、ここには少し注意が必要です。「各部門でAIを積極的に使ってください」とだけ伝えると、それぞれの担当者が自分の仕事に便利なツールを作り始めます。個々の成果は悪くありません。しかし、時間が経つと、部門間の作業に重複や不整合が発生し、会社全体として何が改善されたのか分からなくなることがあります。

これは新しい問題ではありません。ExcelやAccess、部門独自のSaaSでも同じことが起きました。現場が自分で改善できることには大きな価値がありますが、同時に、部門ごとのローカルルールやデータが増えてしまう。AIは「作ること」をさらに簡単にするため、この傾向を一段と強める可能性があります。

だからといって、AIを中央集権的に管理するのも得策ではないでしょう。新しいツールを試すたびに管理部門に承認を求めたり、必要なデータを入手するたびにIT部門やITベンダーに依頼したりしていると、試行錯誤のスピードは著しく落ちます。技術変化の速い現在、最初から一つの会社標準だけを強制することにも慎重であるべきでしょう。

ここで経営陣が果たすべき役割は、AIの使い方を細かく決めることではありません。会社として何を優先し、各部門にどのような成果を求めるのかを明確にすることです。

例えば、今年の重点が利益率改善であれば、営業には価格決定の精度向上、購買には調達コストの把握、経理にはより早い採算情報の提供といった目標が考えられます。成長が重点なら、顧客への回答速度、新規案件への対応力、既存社員一人当たりの処理能力などが重要になるかもしれません。AIはそれらを達成するための手段の一つです。

こう考えると、AI戦略を独立したものとして作る必要も薄れてきます。「AIを何件導入したか」ではなく、会社の優先事項に対して何が改善されたかを見ればよいからです。

その上で、現場には方法を試す自由を残すべきです。AIが適していればAIを使う。業務プロセスの簡素化や既存システムの改善の方が合理的なら、そちらを選べばよい。経営は方向と成果を示し、現場は最も良い方法を探し、IT部門は安全に試せる環境と本番運用の最低限のルールを整える。この役割分担が、多くの企業に当てはまるはずです。

業界知識や長年の経験も、もちろん重要です。ただし、それは従来の方法を自動化するためではなく、何が事業にとって重要なのかを判断するために使うべきでしょう。テクノロジーによって「できること」は急速に変わっています。

AI時代の経営者に求められるのは、AIについて詳しくなることではありません。何を優先するのかをはっきりさせ、達成方法については組織に十分な自由を与えることではないでしょうか。

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